どうせ死んでしまうのに、なぜ今死んではいけないのか?など
どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか? (角川文庫)
- 作者: 中島義道
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/11/22
- メディア: 文庫
- 購入: 20人 クリック: 225回
- この商品を含むブログ (31件) を見る
「人嫌い」をテーマにした本は他にもあるのだが、今のところ中島義道ほどこのテーマに真面目に取り組んでいる人間にはお目にかからない。
他の作者の本は「人嫌いな自分」を普通の人より何か上に見てるような斜に構えたところがあって、それが非常に鼻につくのである。
自分で好きこのんで独りでいるのに、周りを内心で貶めて満足感を得るようになってはお終いだ。世間から自由になっているようで全く自由になっていない。
中島義道も、こんなタイトルの本を書き引きこもりを勧めながらも、この危うい陥穽には気づいているようである。
正しく引きこもるための3条件として、1.自殺しないこと2.引きこもりつつ学びつづけることに続けて、3傲慢にならないことを挙げている。
第三に、いかに苦しくとも、絶望してはならないが、逆に決して傲慢になってはならない。ひきこもっている者が、自分のほうが世間であくせく働いている者より偉いと思った瞬間に、その者は急坂を転げ落ち、泥沼に投げ捨てられる。
彼(女)はひきこもっている資格はない。
タイトルからは違う印象を受けるかもしれないですけど、この本は完全に「生きるための本」であって死ぬための本ではありません。
完全自殺マニュアルを読んだときも感じたことですが、死そのものを見つめることによってそれまであやふやだった生きることの意味が見えやすくなる、ということは十分にあり得るのではないかと。
私の死および宇宙の終焉という絶対的不幸に比べると、いかなる世間的不幸も比較を絶して軽いことを、少年のころから私は知っていたのである。あらゆる幸福は、ただこの絶対的不幸をほんの少し忘れさせてくれるだけの清涼飲料に過ぎない。それはただちに醒めてしまい、しかもその後一段と絶対的不幸の威力は勝るのだ。この自覚は私にとって救済であった。
私は、これまでの人生で(いわゆる)幸福を求めなかった。絶対的不幸が存在するかぎり、それはにせものであることを知っていたからである。そして、ただ絶対的不幸だけをじっと見据えて生きてきた。まさに絶対的不幸の自覚が、あらゆる幸福幻想を吹き飛ばしてくれ、世間的な卑小な不幸を蹴散らしてくれ、幸不幸に囚われない生き方に導いてくれ、そして私に真に生きる力を与えてくれることを知っていたからである。
死という絶対的不幸が同時に私を救ってくれた。人生の妙味に触れる思いである。
筆者の今までの本では、どことなく攻撃的なえぐみを感じたのだが、この本ではそれほど感じなかった。身近な人(K君)が死んだこともあるのだろうし、厭なことはなるべくしないスタンスが周りにも浸透して、筆者本人が生きやすくなったこともあるのかもしれない。
本文の締めの言葉がこれである。
半隠遁宣言し日々研鑽を積んでいくうちに、誰も特に憎くなく、誰もとくに恐ろしくなく、誰も特に羨ましくなくなってしまい、やれやれと安堵の息をつく暇もなく、自分が思わぬ陥穽にはまっていることに気づいた。困ったことに、死刑囚のように、「生きること」そのことがいとおしくなってきたのである。
だから、「死ぬこと」がますます厭になってきたのである。本当に困ったことである。
まあ、なんだかんだ言ってこの人は恵まれてるのかも知れない。私も、30過ぎたあたりから段々周りが気にならなくなってそれなりの社会的スキルでやり過ごすことができるようになってきたので、おそらくこれから「生きること」そのことがどんどんいとおしくなってくるんだろうと思う。
- 作者: 乙幡啓子
- 出版社/メーカー: 廣済堂出版
- 発売日: 2008/11/25
- メディア: 単行本
- クリック: 39回
- この商品を含むブログ (22件) を見る
アマゾンのお勧めにあった本。たぶん、べつやくれいの「ココロミくん」を買ったからだろう。同じデイリーポータルのライターだし。
「声を固める」とか「マンガのようなバッティングをしてみる」が面白かった。
[新版]バフェットの投資原則―世界No.1投資家は何を考え、いかに行動してきたか
- 作者: ジャネット・ロウ,平野誠一
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2008/08/22
- メディア: 単行本
- クリック: 6回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
まあ、バフェット本の一つ。含蓄ある語録なので、読み物として面白い。
ちょっと驚いたのは、一介の上院議員だったころのバラク・オバマについて言及しているところ。
出典が2003年のシカゴ・トリビューンらしく、6年も前の発言である。
「彼については、滅多にない強い確信を抱いています・・・彼は、生きている間にアメリカの進路に重要な影響を及ぼす可能性があります。
そういう可能性がこれほど高いと思われる人に、私は今まで会ったことがありません。」
この時期にオバマが大統領になったことで、この予言については既に成就したと言ってもいい。
英雄、英雄を知るという奴だろうか。オバマは無名のころから何かを感じさせる人物だったらしい。