いかにもこれが経済
- 作者: 吉崎達彦
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/04/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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人気サイト「溜池通信」の書籍化。
経済ネタって、時期を外すと恐ろしく時代遅れに見えたりもするものですけど、今読んでも面白いネタばかりなのは流石と言う感じです。
実を言うと、こういう経済ネタブログをやっているにも関わらず、溜池通信はたまにしか見てなかったのですが、やっぱり人気になるサイトは違うなあ、と感じました。深い知識と見識に裏打ちされていながら、身近なネタを扱って分かりやすく読ませる。経済ネタサイトとはこうありたいものです。
「気が付いたら、25年間の会社員生活のうち、10年間も『溜池通信』を書き続けたことになります」との記述があったので、ふと思い起こしてみると、私が社会人になったのが97年、モナー総研旧本家の開設が2002年だから、
「13年間の会社員生活のうち、7年以上『モナー総研』を書き続けた」ことになるんだなあ、と。半分以上。
まあ、「溜池通信」に比べるべくもない零細ブログですが・・・
- 作者: 泉正人
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2009/04/18
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わかりやすくて良い本かと。
- 作者: 竹中正治
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/02/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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キチンとした知識と経験を持つ著者が丁寧に俗論を論破している本、と言うイメージを受ける。とはいっても堅い本と言うわけでなく、「地下鉄のバイオリン弾きの話」とか「アリの集合知性」の話など、興味深い話を巧みに織り交ぜている。
特に、アリの話は興味深い。
餌を偶然発見したアリは巣への帰路、ある種の化学物質を分泌することで足跡を残すそうだ。他のアリたちはこの足跡に遭遇するとそれを辿り始め、餌を見つけると同様に化学的な足跡を残しながら巣に帰還する。こうしてたくさんの餌のある場所と巣の間には、化学的な足跡で太くなったルートが形成される。
ひとつのルートを辿るアリの数が少しでも多ければ、他のアリも誘引されるので、ルートは一つに収斂する傾向が生まれる。発見された餌場が大きいほど、多くのアリが長時間にわたってルートを往来するので、化学的な足跡も濃くなり、太いルートとなる。こうした結果、餌の運搬ルートがある程度効率的に形成され、収斂する。これは株式市場のその時代ごとの人気銘柄、主要銘柄の形成にたとえられるだろう。
ただしこれだけだと、未知の地点にある餌へのルートが開拓されなくなる。驚くべきことにアリはある程度定期的に既存の主要ルートを外れ、バラバラな方向へ歩き始めるそうだ。既知の餌を効率的に確保すると同時に未知の餌も探索、開拓する行動パターンをアリは備えていることになる。この行動は新興記号への投資に相当するとも言える。
この後、筆者はこのアリの行動を市場の動きになぞらえて話を展開していくわけだが、市場にかかわらず、人間の集団行動全般について示唆的な話のような気がする。
アリの行動に関する話で、私が以前読んだ話はいわゆる「2:6:2の法則」である。働きアリのグループの中でも、よく見ると「よく働くアリ、普通に働くアリ、全然働かないアリ」の3パターンが存在していて、「よく働くアリ」だけを集めても結局はそのうちの2割しか一生懸命働かない、と言うやつである。「なるほど、アリも人間と同じでろくに働かない奴はいるんだねえ・・・」と何となく思ったことがある。
ただ、この本を読んで若干考えが変わった。「働かないアリ」の中でもフラフラ遠出しているような奴は、実は「新規ルートの開拓」と言う極めて重要な任務を負っていたのではないか、と。まあ、アリのことだから自覚があるわけではないだろうけど・・・。
でも、画期的な発明・発見がちょっとした偶然から生まれることってありますからね。あんまりガチガチと言うのもかえって脆いのかも。