KJ-monasouken’s diary

昔「モナー総研」と言うスレ紹介ブログやってた人のブログ。いまはTwitterの活動がメイン。

村上春樹的みずほ銀行(プログラマー)

みずほも首脳陣が交代するらしいですね。

<みずほFG>3首脳が4月に交代 FG社長は塚本氏

みずほフィナンシャルグループ(FG)は16日、前田晃伸みずほFG社長(64)の後任に塚本隆史副社長(58)が昇格するトップ人事を発表した。傘下のみずほコーポレート銀行頭取には佐藤康博副頭取(56)、みずほ銀行頭取に西堀利副頭取(55)が昇格する。いずれも4月1日付。

 前田みずほFG社長と斎藤宏みずほコーポレート銀頭取(64)、杉山清次みずほ銀頭取(61)は、それぞれ会長に就任する。

 みずほグループの3首脳が一斉に交代するのは、02年4月のグループ発足以来初めて。前田社長と斎藤頭取は発足以来7年間にわたってトップを務めており、若返りを図る。杉山頭取は04年3月に就任したが、全国銀行協会会長の任期を今春で終えるのを機に退く。

みずほと言うと、統合前後の混乱を思い出すがなんだかんだ言ってよく持ちこたえてきたものだ。


ということで、モナー総研旧本家で最初に取り上げたスレッドでもあるこのスレを再掲。個人的には、今でも一番好きなスレッドである。

1 名前:仕様書無しさん 投稿日:02/04/18 22:39
「完璧な統合などといったものは存在しない。完璧な絶望が
存在しないようにね。


2 名前:仕様書無しさん 投稿日:02/04/18 22:39
僕が要件定義局面のころ偶然にも知り合ったPMは僕に向ってそう言った。
僕がその本当の意味を理解できたのは今年の4月1日のことだったが、
少くともそれをある種の慰めとしてとることも可能であった。
完璧な統合なんて存在しない、と。


しかし、それでもやはりリレーコンピュータで接続という
段になると、いつも絶望的な気分に襲われることになった。
一ベンダーに扱うことのできる領域はあまりにも限られたものだった
からだ。例えば富士銀行について何かが書けたとしても、
第一勧銀については何も触れないかもしれない。
そういうことだ。


2年間、みずほはそうしたジレンマを抱き続けた。---2年間。長い歳月だ。
もちろん、あらゆるものから何かを学ぼうとする姿勢を
持ち続ける限り、障害を起こすことはそれほどの苦痛では
ない。これは一般論だ。


4月を少し過ぎたばかりの頃からずっと、みずほはそういった
対応を取ろうと努めてきた。おかげで財務省から何度と
なく手痛い打撃を受け、欺かれ、誤解され、また同時に
多くの賠償請求な体験もした。様々な取引先がやってきてみずほに
語りかけ、まるで橋を渡るように音を立ててみずほの上を通り過ぎ、
そして二度と戻ってはこなかった。みずほはその間じっと口を
閉ざし、何も語らなかった。


そんな風にしてみずほは障害発生後最初の月を迎えた。


3 名前:仕様書無しさん 投稿日:02/04/18 22:47
今、僕は障害対応に出かけようと思う。
もちろん問題は何ひとつ解決してはいないし、作業を終えた時点でも
あるいは事態は全く同じということになるかもしれない。結局のところ、
要員増加を行うことは障害回復の手段ではなく、障害回復へのささやかな
試みにしか過ぎないからだ。


しかし、正直に状況を語ることはひどくむずかしい。
僕が正直に語ろうとすればするほど、みずほの信用度は闇の
奥深くへと沈み込んでいく。


弁解するつもりはない。少くとも公式コメントで語られていることは
現在のみずほにおけるベストだ。つけ加えることは何もない。
それでも僕はこんな風にも考えている。うまくいけばずっと
先に、何年か何十年か先に、復旧されたシステムを発見すること
ができるかもしれない、と。そしてその時、象は平原に還り
みずほ上層部はより醜い言葉で派閥争いを始めるだろう。


71 名前:仕様書無しさん[sage] 投稿日:02/04/29 21:13
「悪いけど、今ソースコードを書いてるんです。あとでかけなおして
くれませんか?」
ソースコード?」、女はあきれたような声を出した。「稼動の1週間前に
ソースコードを書いているの?」
「あなたには関係ないことでしょう。何日に何を書こうが僕の勝手だ」、
僕はちょっとむっとして言った。


「それはそうね」、女は表情のない乾いた声で言った。ちょっとした感情の
変化で声のトーンががらりとかわるのだ。「まあいいわ。あとでかけなおすから」
「ちょっと待って」、僕はあわてて言った。「どこかの電力会社だとしたら、
何度電話をかけてきたって無駄ですよ。こっちは開発中の身だし、テストを
している余裕なんてないから」


「知ってるから大丈夫よ」
「知ってるって何を」
「だからまだ開発中なんでしょう。知ってるわよ、そんなこと。だから早くあなたの
大事なソースコードを書いていれば」
「ねえ、あなたはいったい…」と言いかけたところで電話が切れた。すごく唐突な
切れ方だ。


75 名前:仕様書無しさん[sage] 投稿日:02/04/29 22:52
「みずほのATMは不思議な台でした。一見何の問題も無いように見える。
でもやってみると何かが違うんです。同じ画面、同じ操作手順なんです
が、他の機種とは何かが違う。その何かが麻薬のように人々をひきつけた。
・・・私が『みずほATM』を悲運の台と呼ぶには二つばかり理由があります。
第一にその危険性が人々に十全に理解されなかったこと。彼らがやっと
理解しはじめた頃はもう遅すぎた。第二に会社が倒産してしまったこと。
あまりにも非良心的にやりすぎたんですな。みずほはさるハゲタカファンド
に買収されました。本社はシステム部門は必要ないと言った。それまでです。」

僕は暗い気持のまま考え込んだ。

「ところで、あなたのみずほでのベスト残高は?」
「十六万五千。」と僕は言った。
「そりゃ少ない。」と彼は表情も変えずに言った。
「実に少ない。」そしてまた耳を掻いた。


104 名前:仕様書無しさん 投稿日:02/05/05 16:09
「予定が変更された」と聞き覚えのある声が言った。「システムの具合が急に悪く
なったんだ。もう余り時間がない。だから君のタイム・リミットも繰り上げられる」
「どれくらい」
「一ヶ月。それ以上は待てない。一ヶ月たっても二重引き落としがなくならなければ、
君はおしまいだ。君が戻るべき場所はもうどこにもない」
一ヶ月、と僕は頭の中で考えてみた。しかし僕の頭の中では時間の観念が取り返し
のつかないくらい混乱していた。一ヶ月でも二ヶ月でもたいした違いがないように思
えた。そもそも一行のバグを探し出すのに一般的にどれくらいの時間がかかるかという
基準がないのだから仕方がない。
「よくここの場所がわかりましたね」と僕は言ってみた。
「我々には大抵のことはわかる」と男は言った。
「バグの場所以外はね」と僕は言った。
「そういうことだ」と男は言った。


130 名前:みずほの終り 投稿日:02/05/25 20:30
ドアの外にはPGのための場所がある。PGたちは夜の間そこで眠る。手を洗うための
洗面所があって、その水を飲むこともできる。その向こうには見渡す限りの簡易ベッド
がつづいている。まるで海原のようにどこまでもつづいているのだ。


「まああんたはここに来たばかりだから仕方ないが、それでもしばらくここで暮らして
きちんとすりゃ、同僚になんて興味を持たなくなる。他のみんなとおなじようにな。
もっとも納期直前の一週間だけは別だがな。」


納期直前の一週間、PG達が戦う姿は誰も見たがらない、と守衛は言った。
PG達は納期直前の一週間だけ、いつもの温和な姿からは想像もできないほど
凶暴になり、互いを傷つけあうのである。そして床に流されたおびただしい量の
血の中から新しいプログラムと新しいシステムが生まれてくるのだ。


131 名前:ハードボイルド・ワンダーランド 投稿日:02/05/25 21:20
「いいですか、今リレーコンピュータ方式は完全に凍結されています。何故だかは
わかりません。たぶんなにかしらのトラブルが予想されるからでしょう。もしシステム
障害が起これば懲罰程度では済まないでしょう」


老人は依頼書類の入ったホルダーをまた私に差し出した。


「その最後のページをよく見て下さい。リレーコンピュータの使用許可がついてるはず
です」


たしかにそこにはリレーコンピュータの使用許可がついていた。全く上層部の人間が
何を考えているのか私には見当もつかない。穴を掘ったらそれを埋めろといい、埋め
たらまたそれを掘れと言う。迷惑するのはいつも私のような現場の人間なのだ。


132 名前:仕様書無しさん 投稿日:02/05/25 22:02
>>131
>全く上層部の人間が何を考えているのか私には見当もつかない。穴を掘ったら
>それを埋めろといい、埋め たらまたそれを掘れと言う。迷惑するのはいつも私
>のような現場の人間なのだ。

ここは一字一句原作どおりだと思うけど、まさにだめぽのためにあるような文章だなw


135 名前:仕様書無しさん 投稿日:02/05/26 11:56
「じゃあ教えてやる。バグはPGによってマシンルームの外へ運び出されるんだ。それが
かいだすということばの意味さ。PGはシステムのバグを吸収し回収し、それを外の世界に
持っていってしまう。そしてカットオーバーになるとそんなバグを体の中に貯め込んだまま
死んでいくんだ。彼らを殺すのはマシンルームの寒さでも吉牛の不足でもない。彼らを殺す
のはクライアントが押しつけた自我の重みなんだ。そして春が来ると新しいPGが生まれる。
死んだPGの数だけ新卒が生まれるんだ。そしてその新卒たちも成長すると掃き出された
クライアントの自我を背負って同じように死んでいくんだ。それが完全さの代償なんだ。
そんな完全さにどんな意味がある?弱い無力なものに何もかもを押しつけて保たれるような
完全さにさ?」
僕は何も言わず靴の先を眺めつづけていた。



136 名前:仕様書無しさん 投稿日:02/05/26 12:05
「システムはそんな風にして完全性の環の中を永久にまわりつづけているんだ。不完全な
部分を不完全な存在に押しつけ、そしてそのうわずみだけを吸って生きているんだ。それが
正しいことだと君は思うのかい?それが本当のシステムか?それがプロジェクトのあるべき
姿なのかい?いいかい、弱い不完全な方の立場からものを見るんだ。SEやPGや派遣の
人々の立場からね」
僕は目が痛くなるまで長いあいだモニターの光をじっと見つめていた。それから眼鏡を
とって目ににじんだ涙を手の甲で拭いた。
「明日の三時に来るよ」と僕は言った。「君の言うとおりだ。ここは僕がいるべき場所
じゃない」


137 名前:仕様書無しさん 投稿日:02/05/26 12:23
「どうしてPGたちは仕様の決定に参加しないんだろう?」と僕は訊いてみた。
「それはきまっていることなのよ。どうしてかは私にもわからないわ」とPMは言った。
「PGたちはクライアントが参加する会議には決して出席しないの。もちろん私たちが指示
すれば出ることはあるけれど、そうでない限りは出ないの」
マシンルームでは何人かのPGたちが背骨を折り畳むようにして身をかがめ、机の仕様書を
読んでいた。我々がすぐそばを通りすぎても、彼らは顔ひとつあげずに仕様書を読みつづけ
ていた。モニターの画面には彼らの白い顔がくっきりと映っていたが、それはまるで水底に
落ちた白い骨のように見えた。


165 名前:仕様書無しさん[] 投稿日:02/06/04 01:28
「だから祖父を許してあげてね」と娘が言った。

「僕が許しても許さなくても、そんなことは君のおじいさんにとってはきっと
 関係ないと思うよ」と私は答えた。
「でもどうして君のおじいさんは途中で統合プロジェクトを放りだしたりしたんだろう?
 それほど責任を感じているんならこれ以上犠牲が出ないように
 もっとデバッグやテストを進めるべきじゃないのかな?
 いくら大組織の中で働くのが嫌だといっても
 デスマーチで人がばたばた死んでいるんだからね」


「祖父は『赤みずぽ』そのものを信用できなくなったのよ」と娘は言った。
「Dの『赤みずぽ』とFの『青みずぽ』は同じ人間の右手と左手だと祖父はいっていたわ」


「どういうこと?」


「つまり『赤みずぽ』と『青みずぽ』を統合することは技術的には殆ど不可能なのよ」


「技術的にはね。
 でもとりあえずリレーコンピュータでつなぐだけなんだ。きっとうまくいくはずだ」


「でもね、もし」と娘は言った。
「『赤みずぽ』と『青みずぽ』が旧3行の多数決で操られていたとしたらどう?
 つまり2行より3行のほうが多数決で迅速に決断できるんだとか屁理屈をこねて」


私は彼女の言ったことについて考えをめぐらせてみた。
信じられない話だが、まったくありえないことではなかった。
「もし君の言うとおりだとしたら、ひどく難しいプロジェクトになるだろうね」
と私は言った。
「両方を競りあわせることによって、決断をいくらでも遅らせることができる。
 力を伯仲させておけば上層部は責任を取らされる心配もない」


「祖父はみずぽの中でプロジェクトを進めているうちにそのことに気づいたのよ。
結局のところみずぽはシステムの重要性を軽視した銀行にすぎないのよ。
祖父はもしこのままプロジェクトをつづけたら事態はもっとひどいことになるだろうと
予測したの。勘定系や元帳データはむちゃくちゃになってしまうだろうってね。
そこには抑制と歯止めがなくちゃいけないのよ。
でも『赤みずぽ』にも『青みずぽ』にもそれはないわ。
だから祖父は統合プロジェクトを降りたの。」


167 名前:仕様書無しさん[ハードボイルドワンダーランド(上)P268〜P272] 投稿日:02/06/07 21:30
金融庁の連中が3人やってきたのは3日後だった。一人はいつも私のところに来て
検査していく生意気なキャリア組の若い男だった。
「本当に実害はないんですね?」その若いキャリア官僚が抑揚のない声で言った。


「これはとても重要なことだからよく思い出してください。あとで訂正はききません
からね。電力会社は何の根拠も無く無駄な行動はとらない。彼らがあなたのシステム
について事前にテストをしようとしたなら、それはあなたのシステムにバグがある
と言う根拠があったからです。あなたがバグについて何の認識もなかったとは考え
られないんですがね」
「そんなに頭がいいんなら、そのバグの修正方法を教えてくれないかな?」


キャリア官僚はしばらくシャープ・ペンシルの先でこんこんと手帳のかどを叩いていた。
「修正方法はともかく、過去の事実関係についてはこれから調べ上げますよ。徹底的に
調べる。我々が真剣にやれば大抵のことはわかるんです。そしてもしあなたが何かを
隠していたことが判明すれば、これは厄介なことになりますよ。我々には国家がついて
います。というより我々が国家です。我々にできないことはないのです」


169 名前:仕様書無しさん[世界の終わり(下)P255〜P257] 投稿日:02/06/08 00:43
私の振替依頼は一つにまとまって吸い込まれているわけじゃないのよ。私の
依頼電文はばらばらになって、いろんなサーバの中に吸い込まれ、その断片は他の
人の断片と一緒に見分けがつかないくらい複雑に絡み合っているのよ。古い振替依頼
とはそういうものなの。誰にもそれを解きほぐすことはできないの。混沌は混沌の
ままで消えていくのよ」


彼女の言っていることはよく分かった。そして今僕に残された時間は二十一時間しか
ない。僕はその二十一時間の間になんとか彼女の口座に辿りつかなければならないのだ。


「私の依頼電文が本当に読めると思うの?」
「僕には君の依頼電文を読むことができると思う」
「どんな風にして?」
「それはまだ分からない。でもきっとできる。僕には分かるんだ。きっとうまい方法が
ある。そして僕はそれをみつける」




「私の依頼を見つけて」しばらく後で彼女はそういった。


174 名前:仕様書無しさん[世界の終わり(下)P344〜P346sage] 投稿日:02/06/08 13:15
「どうしてだ?君はこの間この世界から脱出するって約束したじゃないか?一体何が
君の心をそれほどがらりと変えてしまったんだ。女かい?」
「それももちろんある。でもそれだけじゃない」
PGはため息をついた。そしてもう一度空を仰いだ。


「君は彼女の振替依頼を修正したんだな?そして彼女とふたりでみずほで暮らすこと
に決め、俺を追い払うつもりなんだろう?」


「もう一度いうけど、それだけじゃないんだ」と僕は言った。
「僕はこのシステム障害を生み出したのが一体何ものかということを発見したんだ。
君はシステム障害を作り出したのが何ものか知りたくないのか?」


「知りたくないね。俺は既にそれを知っているからだ。このシステム障害を作り出した
のは、みずほ自身だ。三つの勘定系システムからリレーコンピュータから、非現実的な
作業スケジュールから、何から何までだ。このエラーログも、このバグもだ。
それくらいのことは俺だってわかるんだよ。」


「僕には僕の責任があるんだ。僕は上司から勝手に振られた仕事とはいえ、自分の
作り出したシステムやプログラムをあとに放り出していってしまう訳にはいかない
んだ。君の考え方は正しいと思うし、君と別れるのはつらい。でもここは僕自身が
住む世界なんだ。プログラムは僕自身の思考の流れのプログラムで、システムは
僕自身が作り上げたシステムなんだ」


「止めても無駄なことはよくわかった」とPGは言った。「しかしPGとしての生活は
君が考えているよりずっと大変なものだよ。生き延びるための勉強は厳しいし、デス
マーチは長くつらい。無能な上層部の下につくとなかなかそこから逃れられない。延々と
実りのない作業を繰り返さなければならないんだよ」
「そのこともよく考えたんだ」
「しかし心は変わらないんだね?」


このスレの影響もあって、村上春樹作品の中では「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」が一番好きだ。
あとは、小説じゃないけど「アンダーグラウンド」とかかな。


◎◎村上春樹的就職活動2005年卒◎◎(就職)


春樹スレは何スレか取り上げてるので、この際一気に再掲します。

1 名前:就職戦線異状名無しさん[sage] 投稿日:04/01/21 01:10
「わかりません。自分でもわからないんです。」僕は面接官に向かって言った。
自分の声さえも変な方向から聞こえてきた。
「面接を受けているうちに、もうどうでもいいような気がしてきたんです。」
「どうでもいい?」
「たいした学歴じゃないし、自己PRになることもない」
「でも君はさっきクリエイティブな仕事がしたいと言ったよ」
「言葉のあやです」と僕は言った。
「どんな就活にも旗は必要なんです」


20 名前:就職戦線異状名無しさん 投稿日:04/01/29 02:24
「あなたのことを書けばいいのよ。簡単じゃない?」
 彼女は白紙のエントリーシートにひどくあきれた様子でそう答えた。
「問題はそう単純じゃないんだ」
 タバコに火をつけることのようにこの問題を片付けてしまった彼女に
僕はひどく裏切られた気分になった。
「単純よ。あなたが難しくしているだけ」
「そうじゃない。僕は海の底で魚を食べて生きていきたいだけなんだ」
 彼女はそれを聞くと静かに息を吐いた。
「ええ、みんなが本当はそうしたいって思っているわ。でもそれは出来な
 いの。だって、みんなが海の底に行ってしまったら地上には誰もいなく
 なってしまうでしょ?」
「なら誰も自分のことなんて書けやしない」
「そうね」
「しかし君は簡単だと言った」
「簡単よ。そんなこと考えなければ良いの。カメレオンだって餌をとるた
 めに体の色を変えるわ」
「だったらエントリーシートなんてカメレオンが書けば良い」
「だめよ。あなたのエントリーシートだもの。あなたがカメレオンになっ
 て書くしかないのよ」
 彼女はそう言うとゆっくりと立ち上がり部屋を出ていった。僕はその間
ずっと、カメレオンになった自分を想像していた。


106 名前:就職戦線異状名無しさん[sage] 投稿日:04/03/04 11:12
「最後にひとつ」と面接官は座ったまま、僕を見上げていった。
「こういうことを言うのは失礼かとも思うんですが、思い切って
 申し上げまして、あなたを見ているとどうも何か釈然としない
 ところがあるんですよ。慶応の経営学修士で、サッカーチームの
 キャプテンで、感じがよくて、理路整然としている。おっしゃる
 こともいちいちもっともだ。きっと他社さんの面接の受けも
 よいんでしょうね。でもうまくいえないんですがね、最初に
 お目にかかったときから何かが私の胸にひっかかるんです。
 うまく呑みこめないものがあるんです。別に個人的にあなたに
 からんでいるわけじゃないんですよ。だから怒らないで下さいね。
 ただ気になるんです。いったいなにが内定をだすのをためらわせる
 のかってね」



107 名前:就職戦線異状名無しさん[sage] 投稿日:04/03/04 11:13
「ひとつ個人的に伺いたいことがあるんですが、かまいませんか」
ぼくは言った。
「どうぞ、なんなりと」
「もし企業の社会的地位が平等じゃないとしたら、御社はだいたい
 どのへんに位置しているんですか?」
面接官は、冷めたコーヒーをぐいと流し込み、頭を振って、それから
まるで誰かに何かを押し付けるみたいに、時間をかけてゆっくりと
ため息を吐いた。「知りません。でも大丈夫ですよ。少なくとも
あなたが内定をとるであろう企業と同じところじゃあないですから」


126 名前:就職戦線異状名無しさん 投稿日:04/03/08 14:59
 一ヶ月なんて、まったくのところ、あっという間に過ぎてしまう。
この一ヶ月の間いったい何をしていたのか、僕にはまるで思い出せない。
色んな事をやったような気もするし、何もしなかったような気もする。月末になってリクルーターの電話がやってくるまで、一ヶ月が過ぎてしまったことにさえ僕は気づかなかった。

 しかし何はともあれ、内定をもらうための朝はやってきた。
僕は朝六時に目覚め、窓のカーテンを開け、それが内定日和であることを一瞬のうちに確認した。
僕は顔を洗い、食事を済ませ、猫に食事を与え、洗濯をし、リクルートスーツを身にまとって家を出た。


128 名前:就職戦線異状名無しさん 投稿日:04/03/09 01:55
彼女が僕の大学生活の事を訊ね、僕は所属していたサークルやらアルバイトの事、
或いはそれらに嘘を交えて話した。
「楽しかった?」
「悪くなかったね」と僕は言った。
「でもそれだけじゃなく色々と得る物があったみたいね」と彼女が言った。
「色々とやってきたからさ」と僕は言った。
「そしてその大学生活というのは嘘な訳ね」
僕はびっくりして自分の話を思い返してみた。
「どうしてそんなことがわかったのかな?」
「あなたって正直ねえ。そんなのあなたをみればわかるじゃない」
と彼女はあきれたように言った。


129 名前:就職戦線異状名無しさん 投稿日:04/03/09 01:57
「平凡な大学生活だったのよね」
「充実していたと思わせようとはしてるんだけど」
「面接は嘘が通じないと思わなきゃダメよ」
僕は何度か頭を振ってから彼女の顔を見た。
「多分僕の頭が悪いせいだと思うけど、一体君がどうやって嘘を見抜いたのかさえ
理解できないでいる」
「大学生活の中で楽しいこととそうじゃないことがあるでしょ?嘘をついて楽しいことをどんどん言っていても
苦労したことが無ければ、そこにはリアリティーが感じられなくなるわよね。私、そういう話を聞くと
いつもそう思うのよ。今話されているこの話は作られたものなんだって。学生は充実した学生生活の
虚像を見せているだけだって」
「まあ一つの哲学ではあるな」
「でもそれ本当よ。私、経験的にそれを学んだもの」と彼女は言った。


締めコメントで、自分でも書いてみました。

面接官は僕をじらすように、今度はたっぷりと間をおいた。彼は自分に余裕があることを意図的に見せつけているようだった。


>君は君の立場をかなり誤解していると思う。もっと正確に言えば自分のことをずいぶん過大評価していると思う。君が大学で何をやってきたのか私は知らないし、特に知りたいとも思わない。


 ただ私は自分の社会的立場上、できれば自分の大学の後輩をとりたかったし、そのためなら就職のことで私なりに尽力しても良いと思っていた。しかしもし君がうちの組織にふさわしくない人間であるのなら、私の方は別にそれで構わない。この先は君とは関係なく、もっと上に上げやすい学生を選ぶまでのことだ。


 これが君と私が話をする最後の機会になるだろうし、君がうちの会社の人間と話すこともおそらくもう二度とないだろう。もしこれ以上新しい話がないのなら、この会話はそろそろ切り上げたい。このあとまだ別の学生と会う約束があるんだ。


いや、まだ話は終わっていない。


>話はまだ終わっていません。この数ヵ月のあいだ僕は、なぜ就職をする必要があるのかと言うことをずっと考え続けてきたんです。他の学生がどんどんと内定をとっていく間に、暗い静かな場所で僕は推察を重ねてきました。


 ご存知の通り僕はそれほど頭の回転が良くありません。でもなにしろ時間だけはたっぷりあったから、実にいろんなことを考えました。そしてある時点でこういう結論に達したんです。


 サラリーマンの多くが会社に100%満足しているわけじゃないし、出世欲に凝り固まっているわけでもない。ただ自分が世間と離れて錆びていく感覚が怖いからでしょう。違いますか?



村上春樹的デスノート(漫画サロン)

[04/11/28-00:27]
村上春樹デスノート(漫画サロン)
http://s03.2log.net/home/mri/archives/blog94.html

23 名前:名無しさんの次レスにご期待下さい 投稿日:04/09/11 00:50:57 ID:cP1lUcOp
ミサが最初にデスノートを使った若い男は、スポイラーのついた白いニッサンスカイラインに乗っていた。
日曜日に家の近くを散歩していたら、「ドライブに行かない?」と誘われたので何となく乗ったのだが、
江ノ島近くでむりやりモーテルに連れ込まれそうになったので、傍らにあったデスノートを手にとって
相手の名前を書いた。するとうっという声を出して、心臓麻痺を起こしたのである。
ミサはうんうんとうなって苦しんでいる男をあとに残して車を飛び出し、近くの小田急の駅まで走った。
そして自動券売機切符を買おうとしてその時初めて、自分が右手にデスノートを握りしめていることに気づいた。
ミサは素知らぬふりをしてデスノートをショルダーバッグにしまい、電車に乗って家に帰った。
「それ以来ずっとこのノートをバッグに入れて持ち歩いてるの」と彼女は言う。
「ふうん」
と月はなんでもない風を装って言った。「で、それを使う機会はそのあとあったの?」
「ええ」彼女はバッグミラーに向かって口紅をなおしながら答えた。
「2回ほどね。1回はフェアレディーで、もう1回はシルビア。ねえ、どうして日産の車ばかりなのかしら?」
「どっちもやはり心臓麻痺」
「そうよ、心臓麻痺がいちばん簡単だもの。名前を書くだけでいいし」
「ふうん」と言って、月はもう一度心の中でうなった。心臓麻痺になるのってきっとすごく苦しいんだろうな。
考えただけでゾッとする。
「でもね」
とミサはパチンと化粧バッグを閉めていった。「その中には心臓麻痺にされて当然ってやつもいるのよ」
「そりゃ、ま、そうだろうけど」と月は返事をした。

 
68 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/09/14 01:07:05 ID:???
始めから終わりまで、しみひとつないデスノートを作ることは出来ないかもしれない。
しかし、僕はもう一度このノートを眺めて愕然とし、あきらめの言葉を口にした。
「いいさ、みんな好きなだけ書き込めばいい。」
しかしそれは自分の口から出たものとは思えなかった。


69 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/09/14 01:20:19 id:qHLP8jUc
とにかく、そのようにしてデスノートをめぐる冒険が始まった。


104 名前:マロン名無しさん[] 投稿日:04/09/27 02:46:17 id:DKX8CSjp
「漫画に」
一言そういってから、Lは口に一気にケーキを押し込んで、空になった皿を勢い良く
テーブルの上に置いた。
「テーマはいりません。それが言い過ぎだというなら、必ずしも必要はない。
ねえ、だいたい世の中には、21世紀になってもあまりにテーマと名のつくものが
多すぎますよ。」


僕は黙って、Lが唇に残ったクリームを、服の袖で拭い取るのを眺めていた。
「すくなくとも僕は、このケーキみたいに、読みながら誰かを良い気分にさせる漫画、
そいつに存在価値を認めるね。」


少し考えてから、僕はこう言ってみた。
「でも、人間は誰だって、ずっと良い気分にだけ浸っているわけにはいかないだろ?
それだけじゃ物足りなくなることだってあるだろうし。」


Lはちら、と僕の方を見て、ひとつ首を振ってから、うんざりしたように言った。
「そのときは簡単です。やめちまえばいいんです。やめちまうんですよ。
そいつの漫画を全部本棚から放り出して、月曜日の朝に資源ゴミの回収にでも出しちまうんです。
それで、オーケー。あなたはもう、キラになる必要も無いし、こんな風に拘束されることで貴重な
時間を割かなくても良くなる。
すべてはシンプルに、いたってシンプルに解決します」


134 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/10/01 01:44:02 ID:???
「あなたは十八歳の頃何をしてたの?」
デスノートに夢中だったよ」 二〇〇四年、我等が年。
「死神とはどうなったの?」
「別れたね。」
「幸せだった?」
「遠くから見れば、」と僕は海老を飲み込みながら言った。「大抵のものは綺麗に見える。」


146 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/10/04 21:47:35 ID:???
「甘い物やめたいんですけどね」と彼は言った。
「この仕事やってる限りやめられないですね。絶対駄目だな。食べずにはいられないんです。神経を使うから」
僕は黙っていた。


「神経を使うんですよ。みんなに嫌われるから。
探偵を何年もやっているとね、本当に嫌われるんです。目つきも悪くなるし、隈もできるしね。
どうして隈ができるのかよかわからないんですけどね、とにかく隈ができるんです。
そして実際の歳よりずっと老けて見えるようになる。座り方だって変わってくる。良い事なんて何もないです」


彼はコーヒーに砂糖を三杯入れ、クリームを入れて丁寧に掻き回し、ゆっくりと美味そうに飲んだ。
僕は時計を見た。


「ああ、そうですね、時間ね」
とLは言った。
「まだあと五分くらいあるでしょう?大丈夫です。そんなに時間はとらせません。
行方不明になっている女性のことですよ。南空ナオミっていう元FBI捜査官」


南空ナオミ?」と僕は聞き返した。そんなに簡単にはひっかからない。

彼は爪を噛んでにやりと笑った。



147 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/10/04 21:48:27 ID:???
「ああ、そうなんです。今行方不明で捜索中です。普段は間木照子という名前で行動しています。
もちろん本名じゃないです。偽名ってやつです。やっぱりキラによる殺人でした。

私の勘に過ぎませんが。自殺じゃなかったです。一見どう見ても自殺なんですがね、でも自殺じゃない。
最近は見分けがつきにくいんです。昔はよかった。一目見れば自殺かそうじゃないかすぐにわかった。
外傷の有無とか、検視結果とか、鑑定結果なんかでね。
最近はだめです。そんなことをしてもわからないことがあるんです。科学的に証明できないこととかね。よくないことです。
それに危険だ。そうでしょう?

司法警察職員や検察官が捜査手順に則って調べてみてもわからないことがあるんです。
世の中にはいろんな奇妙なことがある。神もいるし、キラという顔と名前だけで人間を殺せる殺人鬼もいる。危険ですよ。
そう思いませんか?」

僕は仕方なく肯いた。


150 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/10/04 22:34:26 ID:???
「虫唾が走ります」
Lはクリームのついた指を舐め終わるとそう繰り返した。
Lが松田の悪口を言うのは今に始まったことではないし、また実際にひどく疎ん
でもいた。L自身にしたところで相当にあれだったが、僕がそれを指摘する度に
Lは決まって「私のせいじゃありません」と言った。
「いや、お前のせいさ」と僕は言って、そして言ってしまった後で必ず嫌な気分
になった。Lの言い分にも一理はあったからだ。


170 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/10/07 00:02:23 ID:???
「話してもいいかな?」とLが言った。
「いいとも」と僕は言った。

「まったく君はよくやってくれたよ。期待以上だったよ。
正直なところ、私は驚いているんだ。もっとも、君が手詰まりになたら
少しずつヒントを与えていくつもりではあったんだけれどね。
それにしても第二のキラとの巡り会いなんて絶妙だったよ。」

「はじめからわかっていたんですね?」

「あたりまえさ。いったい私をなんだと思ってるんだ?」
「さて」とLはつづけた。

「キラをめぐる冒険は結末に向かいつつある。私の計算と君の無邪気さのおかげだ。」


252 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/11/07 18:56:03 ID:???
「私は貴女の生活に一切干渉しません」
 とLは言った。
「貴女の人生なのだから、好きに生きればいいんです」
 彼女は肯いた。
「でも一言だけ忠告させてください。
バッグの中にノートを入れるのだけはよした方がいいですよ。
第二のキラと間違えられるから」
 それを聞くと彼女はテーブルの上の携帯を手にとって、Lに
思い切り投げつけた。Lは無表情でそれをかわす。
「どうして人のバッグなんかのぞくのよ!」
 と彼女はどなった。彼女は腹を立てるとすぐに何かを投げつけるのだ。
 だからLはそれ以上刺激しないために――バッグの中を探るのみでなく、
以前こっそり彼女の携帯を抜き取ったことがあることや、
自宅の部屋の隅々まで既に調べつくしてあること、
そして今も彼女の私生活をのぞき続けている、

なんてことは言わずにおいた。

以降、原作者ネタが続きます。

34 名前:名無しさんの次レスにご期待下さい[sage] 投稿日:04/09/11 02:39:57 ID:7z6ySoC7
オーケー、いいだろう。君はネームを作り、僕は絵を描く。


35 名前:名無しさんの次レスにご期待下さい[sage] 投稿日:04/09/11 02:50:32 ID:7z6ySoC7
「だいたいこのことの責任は百パーセントあなたにあります。
僕にはなんの責任もない。あなたが始めて、あなたが拡げて、
あなたが僕を巻き込んだんだ。人の頭に勝手に原作のイメージを植え付け、
勝手な漫画を書かせ、読者を裏切らせ、漫画ファンに批判され、
わけのわからない評論の泥沼に僕を落とし、そして僕を終わらせようとしている。
デスノートはもうだめだ』・・・こんなひどい話は聞いたことがない。
そう思いませんか?とにかくもとに戻してください」


74 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/09/15 22:19:37 ID:/Ff2+i0B
「そんなの自分で考えろよ、オバタ」
冨樫さんは顔を歪ませながら言った。
「ビール飲むか?」
いらない、と僕は言った。


75 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/09/15 22:20:21 ID:???
「冨樫さん?」
口の中がからからに乾いていた。
「冨樫さん?」僕はもう一度繰り返した。


76 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/09/15 22:34:33 ID:???
「要するにね、そこにハンター×ハンターがあると思い込むんじゃなくて、
そこにハンター×ハンターがないことを忘れればいいのよ。それだけ」


159 名前:マロン名無しさん 投稿日:04/10/05 18:07:36 id:hYzYi34C
「何故漫画ばかり読む?」
僕はLが手をつけなかった生ハムの最後の一切れをビールと一緒に飲み込んで
から皿を片付け、傍に置いた読みかけの「ハンター×ハンター」を手に取って
パラパラとページを繰った。
「富樫がもう死んじまった人間だからさ」
「生きてる漫画家の本は読まない?」
「生きてる漫画家になんて何の価値もないよ」
「何故?」
「死んだ人間に対しては大抵のことが許せそうな気がするんだな」


174 名前:ハンター×ハンター[] 投稿日:04/10/07 00:31:14 id:X9LGjVoZ
「ねえ、ジャンプを愛してる?」
「もちろん。」
「連載再開したい?」
「今、すぐに?」
「来年の…4月ごろによ。」
「もちろん連載再開したい。」
「でも私が訊ねるまでそんなこと一言だって言わなかったわ。」
「言い忘れてたんだ。」
「…単行本はあと何冊出したい?」
「5冊。」
「夏? 冬?」
「夏が2冊に冬が3冊。」
担当者はコーヒーで口の中のパンをのみ下してからじっと僕の顔を見た。

「嘘つき!」

と担当者は言った。
しかし担当者は間違っている。僕はひとつしか嘘をつかなかった。


181 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/10/07 20:29:52 ID:???
「僕も本当は連載なんかしたくなかったんです」
トガシヒロユキは、打ち明けるように言った。
「でもジャンプに出会って、どうしても連載したくなったんです」
「いい雑誌だよ」と僕は言った。
「大抵の漫画は少し生ぬるくて退屈だけど、選択としては間違ってないと思う」
「でも連載するって何だか怖いですね」
「良い面だけを見て、良いことだけを見るようにすれば、何も怖くないよ。
悪いことが起きたら、その時点でまた考えればいいさ」


236 名前:マロン名無しさん[sage] 投稿日:04/11/02 14:30:53 ID:???
ネームのアイデアが沸いてくる間はとにかく描き続けるんだ。
おいらの言っていることはわかるかい?
描くんだ。描き続けるんだ。
何故描くなんて考えちゃいけない。
意味なんてことは考えちゃいけない。
意味なんてもともとないんだ。


あれ、大場つぐみガモウひろしでは?と思う人もいるかも知れませんけど、このスレがたった当時はまだ冨樫説もあったようです。


当時から最有力だったのはガモウ説で、自分もスレ紹介したことがありますが。
ガモウひろし(懐かし漫画)


小畑絵で、ラッキーマンの読み切りを描いたらどうか。
どんな願いでも書いたことは叶えられるけど、その分顔がどんどん不細工になる「ですノート」をめぐって追手内くんとです代が死闘を繰り広げる、というネタはどうか。


●★村上春樹風に株価を語るスレ★●(株式)


最後は株ネタ。


[05/08/20-13:20]
●★村上春樹風に株価を語るスレ★●(株式)
http://s03.2log.net/home/mri/archives/blog219.html

1 名前:山師さん 投稿日:2005/07/28(木) 00:03:17 ID:h+iD1aKT
 「もう上がらない。無理よ。」
電話の向こうの彼女は僕に冷たく言い放った。
 「ふぅ・・・そうか・・・」
相変わらず、チャートに変化はない。


「5倍になるのよ」
ふと、どこかの占い師が唐突にこの言葉を発した場面を
僕は回想していた。


その占い師によれば某IT企業の株価が五倍になるらしい。
「成り行きで10万株。」のオンライン注文を出すのに
そう時間はかからなかった。自然と体が動いていたのだ。


しかし、以前としてチャートはその形を崩さないでいる。

そのときだった。空売りが殺到し、株価は大きく下に向き始めた。


「終わりか・・・」
僕は受話器を持ったまま、顔を上げ、
電話ボックスのまわりをぐるりと見まわしてみた。

僕は今どこにいるのだ?
でもそこがどこなのか僕には見当もつかなかった。
いったいここはどこなんだ?
僕の目にうつるのはいずこへともなく歩きすぎていく
無数の人々の姿だけだった。

僕はどこでもない場所のまん中から下がるチャートを眺めつづけていた。


6 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/07/28(木) 01:40:07 ID:l+MMYT2Q
気持ちを整理するのにはもっと長い時間がかかった。
まず一番最初に占い師の言ったことを信じるか信じないか
という問題があった。僕はそれを純粋な可能性の問題として
分析してみた。感情的な要素を見渡せる限りのフィールドから
徹底的に排除した。それはさして困難な作業ではなかった。
僕の感情はそもそもの最初から仕手に刺されたみたいに
ぼんやりと麻痺していたからだ。可能性はある。と僕は思った。


12 名前:←(・∀・)Debug ◆xjwBWO6VKU 投稿日:2005/07/29(金) 00:08:46 ID:Kf/qllQl
「あなたは2005年の7月頃何をしてたの?」
デイトレに夢中だったよ。」2005年、我らが年。
「その後株価はどうなったの?」
「戻らなかったね。」
「幸福だった?」
「遠くから見れば、」と僕はExcelシートを埋め込みながら言った。
「大抵の投機家は幸福そうに見える。」


16 名前:山師さん 投稿日:2005/07/29(金) 07:27:10 ID:XzFE6NGA
少し頭が混乱したが、ともかく銘柄名をいい、株価を訊ねてみた。
終値は僕が予想していたより40パーセントも安かった。


17 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/07/29(金) 08:56:20 id:TLwrQR21
そしてその気配値はいつものように僕を混乱させた。いやいつもとは比べものにならないくらい激しく僕を混乱させ揺り動かした。
僕は頭がはりさけてしまわないように身をかがめて両手で顔を覆い、そのままじっとしていた。
僕は顔を上げて自分が株でだした損失のことを考えた。失われた時間、死にあるいは去っていった人々、もう戻ることのない想い。


19 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/07/30(土) 01:01:48 id:w1vCQ2cr
「また持ち越したの?」
「ああ、月曜日のギャップアップは間違いない」
「先週末も言ってなかった?」
「ああ、先週末は外れたが・・・」
「先々週末もその前の週末も外れたわよね?」
彼女は無言でコーヒーを飲み干すと席を立った
「月曜日ロスカットしたらお金返してね」
背中を向けたままそう言い放つ彼女に僕は何も言えないでいた

どれくらい時間がたっただろう
テーブルの上にはコーヒーカップが二つ
彼女の残り香がある狭い部屋で僕はPCに電源を入れた

「来週こそは上がるはずなんだ」

僕は期待している3009に


22 名前:←(・∀・)Debug ◆xjwBWO6VKU 投稿日:2005/07/31(日) 20:00:21 ID:+IoUJxeJ
カフェは海の見える高台にあり、僕が椅子に座ると、髪の長いウエイトレスが冷たいオレンジ
ジュースと二個のドーナツをだしてくれた。
僕は膝に砂糖をこぼさぬように注意してドーナツを半分食べ、オレンジジュースを飲み干した。
「おいしかった?」
「とてもね」
彼女は下唇を軽く噛んだ。
「今日で終わりにするわ」
僕は煙草に火を点け、煙を3回吐き出す間、黙ってカウンターの羽目板の木目を眺めていた。
「嘘はつきたくないのよ。」
「わかってるよ。」
僕たちは黙り込み、くるくると回る楽天証券のロゴをずっと眺めていた。


25 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/07/31(日) 23:27:34 id:dqRb8XuD
「あなたは本当に当てる気があるの?」
彼女は真剣な目で先生を見ていた。
「どうだろう、よく分からないな。正直なところ、僕にはさしあたって当てなければならない理由が無いんだ」
途端に彼女の表情が険しくなった。
「どうして?あなた評論家でしょ?」
「評論家だからいいのさ。いいかい、毎年市場には多くの素人が参入してくる。僕が曲がりやと気づかれるまでは僕の仕事はなくなることはないんだよ。」
先生はまるで朝になれば ニワトリが鳴きますよ、とでも言いたげな当たり前の口調で答えた。

「すべての人に気づかれたらどうするの? 2chではあなたのこと曲がりやの髪と言われてるのよ?」 と彼女は言った。

「いいかい、ドーナツの穴と同じことだ。髪の不在と捉えるか、あるいはハゲの存在として捉えるかはあくまで形而上学的な問題であって、
それで評論家としての価値が少しなりとも変わるわけではない。」

「いや、そういうことじゃなくて・・・」彼女は陰鬱なロシア文学のような顔をした。


28 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/08/01(月) 08:57:45 id:cq3z4tFr
「ねぇ、8月は売りだって予測したの間違ってると思う?」緑がそう訊ねた。
鼠はビールを一口飲み、ゆっくりと首を振った。
「はっきり言ってね、みんな間違ってるのさ。」
「何故そう思うの?」
「外人が買っているよ」鼠はそう言った。
「私は7月も軟調だと思って何度も空売りしたわ。でもロンドンのテロ人民元の引き上げもほとんど影響しなかった。
担がれてとても苦しくて死ぬかと思ったわ。それでね、何度も何度も底値からの日柄を数えたの。
明日で5/17から53日目なのよ。たいした押し目もいれずにこんなに上昇が続くなんて」 
緑はそう言うと軽く笑って、憂鬱そうに目の縁を押さえた。
「トレンド イズ フレンドだよ。これでいくことだね。」鼠は最近読んだブログの言葉を緑に言った。
「それ誰のブログ?」
北浜流一郎


29 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/08/01(月) 15:07:47 ID:+2sej7xS
僕はノートの真ん中に1本の線を引き、
右側に買った後暴落した株、左側に損きりした後暴騰した株を書き始めた。
しかし、それらを最後まで書き通すことはできなかった。

僕は失った資産の大きさに愕然とさせられる。
まるで北極のクマがハンマーをもってきて僕の頭を殴るような衝撃を受けた。
結局のところ、おちんちんびろーんとはそういうものなのだ。


31 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/08/01(月) 23:49:16 ID:8vhW9uIb
「ところであなたの9204の買値は?」

「千二百二十。」と僕は言った。

「そりゃ凄い。」と彼は表情も変えずに言った。「実に凄い。」そしてまた耳を掻いた。


32 名前:山師さん 投稿日:2005/08/02(火) 12:16:57 ID:b3bIbR6T
指数は伸びても僕の持ち株は死んだままだった
この状況は僕をひどく混乱させたし、いささかうんざりもしていた。

そうだ。素直にアドバンテストを買おう。



33 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/08/02(火) 17:56:57 ID:bN/mGc+n
買ったところが今日の天井だった。そう考えると僕はたまらなく哀しい。


34 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/08/04(木) 16:39:06 id:JJM0Gn7x
また損きりした。一度損なわれてしまった金はもう元には戻らないのだ。


35 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/08/05(金) 08:45:11 id:b1GIbgzp
我々はささやかな奇跡を求めてもいたのだ。ちょっとしたきっかけで
クソ株が暴騰することがやってくるかもしれないということを。
しかしもちろんそんなものはやってはこなかった。
そして損きりした。
僕はこの下げ相場をうまくやり過ごせるという気がした。

僕は馴れつつあるのだ。


37 名前:←(・∀・)Debug ◆xjwBWO6VKU [sage http://blog.livedoor.jp/debug1/] 投稿日:2005/08/06(土) 16:54:51 id:sxEMbFmm
僕は最初にこの株と出会ったときから、この株を買いたいと思った。もっと正確に言うなら、
僕はこの株を買わなくてはいけないと思ったのだ。そしてこの株だって僕に買われたがって
いると本能的に感じた。僕は株価を前にして文字通り体がぶるぶると震えた。そして僕は株
価を見ているあいだ何度か激しく勃起して、歩くのに困ったくらいだった。それが僕の生まれ
て最初に経験した「吸引力」だった。


僕はそれから二ヶ月間に亘って脳味噌が溶けてなくなるくらい激しく売買をした。僕は業績
を気にしなかったし、チャートも見なかった。業種についても、地合いについても、PERにつ
いても原油価格についても、何一つ気にしなかった。僕はただただ売買をしているだけだった。


もちろん板の動きのようなものは見ただろうと思う。でもどんな板状況だったのかほとんど思
い出せない。僕が覚えているのは、そこにあった具体的な事物のイメージだけだ。キーボー
ドのNumLockランプ、マウスの隙間に挟まった髪の毛、いくつも並んだ「約定済」「取消済」
の青くい丸いフォント。そこには検討もなければ分析もなかった。僕はそこに提示されたもの
をただ単純に貪っただけだし、株価のほうもおそらく同じだった。僕は日に40〜50回は売買
した。僕は文字通り種が尽きるまでこの株を売買した。亀頭が腫れ上がって痛くなるくらい
激しく売買した。でもそれほど情熱的であったにもかかわらず、それほど激しい吸引力を感じ
ていたにもかかわらず、自分が株主として、長く幸せにやっていけるだろうというような考え
は頭に感じなかった。僕にとってそれはいわば竜巻のようなものであり、いつかは過ぎ去って
いってしまうものだった。こんなことがいつまでも続くわけはない、と僕は感じていたのだと
思う。だから僕は買うたびに、こうして売買できるのもこれが最後になるかもしれないという
思いを頭のどこかに抱いていたし、そのような思いは僕の購入意欲を余計に高めることに
なった。


44 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/08/08(月) 16:29:18 id:ySxv/heK
「ねえ、なぜいつもそんなにすっぱり損きりができるの?」とみどりが言った。
「損きりが好きな人間なんてないさ。郵政法案否決後まで持ち越してさらにがっかりしたくないだけだもの。」

そう言って朝寄りで全株処分した後、後場に暴騰した。やれやれ。


45 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/08/08(月) 20:41:46 id:bI9EcyPN
準備は完全のはずだった。でも世の中には完璧なんてものはなくて、
どこかに抜け穴がある。なぜなら今日の暴騰も、予想可能な範囲内、
あるいは絶対に買うべき所だった。
でも今回もそれを見逃している。

損しなかっただけ、ましか。そう思い直して僕はまた、単調な模様の映った
パソコンの画面に向かった。


49 名前:←(・∀・)Debug ◆xjwBWO6VKU [sage] 投稿日:2005/08/10(水) 00:53:01 id:dwXJupij
 それでも僕はかつての忠実なアホルダーとしてのささやかな誇りをトランクの底につめ、
港の石段に腰を下ろし、空白の水平線上にいつか姿を現すかもしれない中国行きの
スロウ・ボートを待とう。そして中国の街の光輝く屋根を想い、その緑なす草原を想おう。

だからもう何も恐れるまい。クリーン・アップが内角のシュートを恐れぬように、
革命家が絞首台を恐れぬように。もしそれが本当にかなうものなら……

 友よ、
 友よ、10億はあまりに遠い。


52 名前:山師さん 投稿日:2005/08/10(水) 15:34:50 id:mzwB1Mfe
話せば長いことになるが、僕の含み損は郵政法案否決の瞬間から300万ほどになる。
まだ充分に耐えられるが、昨日ほど余裕でもない。
もし明日も日経が爆上げするなら、僕は日曜日の朝にエンパイアステートビルの屋上から飛び降りる以外に手はない。


56 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/08/10(水) 18:27:39 id:uC5ochFQ
「どうしてトレンドに逆らって空売りなんかするわけ?」
「変ですか?」
「わからないな。君は12000円越えたところで空売りをするし、僕は逆に買い増しをする。そのあいだにははっきりとした
違いがあるし、僕としてはどちらが変かというよりは、まず違いをはっきりさせておきたいんだ。
お互いのためにね。それに、株の話は君が先に持ち出したんだよ」
「そうですね」と彼は逝った。「ところでラビ・シャンカールのレコードはお持ちですか?」
ない、と僕は言った。



73 名前:山師さん[sage] 投稿日:2005/08/13(土) 01:14:19 ID:/wifZeHf
「き、君はどんな銘柄を売買するの?」と最初に会ったとき突撃隊はそう言った。
「なんでもいいんだよ。僕の場合」 と僕は答えた。
新日鉄だって、ライブドアだって、昭和ゴムだって何だっていいんだよ。
その日のランキング上位で動いているものに飛び乗るんだ。信用二階建てでね。」
「業績のいい株でやるんだね。」と突撃隊は訊いた。
「いや業績は関係ない。とにかく動いていてさえいればいいんだよ。」 と僕は答えた。
しかし、その答えは彼を混乱させてしまった。
「よ、よくわからないな。そ、そんなことしたら高値掴みすることもあるだろうし、内容も調べないで不安じゃないかい?」
彼の言うことはもっともだった。
事実、僕は一度は全てを失い、キャッシングで借りた金を元手にやっと最近 復活できたのだった。

「ぼ、僕はね。て、低位株が好きなんだよ。」と突撃隊は言った。
「内容のいい東証1部の低位株を調べてさ、て、手書きで月足チャート書いて、2倍3倍になるまでほっておくんだよ。」
なるほど世の中にはいろんな投資手法があり、目標があるんだなと僕はあらためて感心した。

僕たちの部屋の壁にはヌード写真の代わりに突撃隊が書いた特大の山村硝子の月足20年チャートが貼られてあった。
「こ、これを毎日眺めてるとさ、う、動きがわかってくるんだよ。」
突撃隊はこれを見てマスターベーションするんだぜと僕が他の寮生に冗談を言ったことがあったのだが、それはあながち間違いではなかった。