KJ-monasouken’s diary

昔「モナー総研」と言うスレ紹介ブログやってた人のブログ。いまはTwitterの活動がメイン。

ブラック・スワンなど


まあ、面白かったんだけど、ちょっとこき下ろしがしつこすぎるような気もする。


本文で頻繁に出てくるキーワード「黒い白鳥」は別に訳さなくても「ブラック・スワン」のままで良かったのでは。タイトルもそうなんだし。


ブラック・スワンがキーワードとして出てくるのは、旧世界では白鳥といえば全て白いものであるという先入観があり、実際旧世界ではそうだったが、オーストラリアで黒い白鳥が一羽見つかったことによりその考えが覆されてしまったという故事によるものである。


この故事自体はむしろ「悪魔の証明」的な話のような気がする。悪魔が「いない」ことを証明するのはほぼ不可能だが、「いる」ことを証明するには悪魔がどこかで発見されればよい、という例の奴である。(日本人には悪魔が「いない」と考える人が多数だろうが、それは単なる多数決であって証明ではない)

この話で言うと、「白くない白鳥はいない」=「全世界の白鳥は白い」と言うことを証明するには全世界の白鳥を捕まえて一つ一つ白いことを確認しなければならないが、「全世界の白鳥が白いわけではない」=「白くない白鳥もいる」ということを証明するには白くない白鳥を一羽発見すれば十分だと。


つまり、本当は否定と肯定で立証の困難さに著しく差があるにも関わらず、「私は白い白鳥しか見たことがない」「他のみんなもそうだと言っている」から「白くない白鳥はいない」ということが間違いのない真理であると勘違いすることに問題があるということになるだろう。たぶんそういうことを言いたくてこういうタイトルにしたのだろう。自分自身の考えに合致する事実をいくら持ってきても、それが絶対とは言えないということだ。合致しない事実がひとつ出てくるだけで瓦解してしまう。


この本で主たる敵としてやり玉に挙げられているのは「ベル型カーブ」(=正規分布)だが、ベル型カーブは美しいしなんとなく経験的にも正しそうに見えるので、つい絶対の真理のように勘違いしてしまうが実際には正規分布に従わない分布はたくさんある。特に経済的な事象にはたくさんある。なので正規分布に基づいていくら精緻な理論を作り上げても、それは砂上の楼閣にすぎないよ、というのがこの本の主たる主張だと思う。帯には「歴史、哲学、心理学、経済学、数学の世界を自由自在に駆け巡り、人間の頭脳と思考の限界と、その根本的な欠陥を解き明かす超話題作」とあるが、自由自在すぎてかえって主張が分かりにくくなっているように思う。さまざまなところで「黒い白鳥」のキーワードを持ち出すので、「黒い白鳥」がとてつもない化け物のように思えてきた読者も多そうだ。(いや、実際そうなのかもしれないが)


筆者はトレーダーなので、経済学者や統計学者には特に辛辣だ。実際のところ、本当に黒い白鳥を目にすることがなく、本気で白鳥は全て白いと思い込んでいた旧世界の鳥類学者と違って、経済学者は正規分布に従わない事象もいろいろとあることは知っているはずなので、正規分布を当然の前提として多用することは黒い白鳥を鳥かごに閉じ込めておいて、「白くない白鳥はいない」と言っているようなものかも知れない。たぶん、そういう態度が気に食わないのでこういう無作法な本を書いたんだろうなと。(いわば、鳥かごを開けて「足元に黒い白鳥がいるじゃないか」と言ってるような感じだろう。あるいは最初から鳥かごに穴があいているのかもしれないが)


カール・ポパーに度々好意的な言及がなされているが、そういえばジョージ・ソロスポパーの下で学んでいたそうだな、というようなことを思い出した。



ウィトゲンシュタイン 哲学宗教日記

ウィトゲンシュタイン 哲学宗教日記


ウィトゲンシュタインの著作そのものは、私のように哲学をまともに勉強したことのないものにはなかなか理解しづらいのだが、この本は日記なので読みやすい。
生活者としてのウィトゲンシュタインの不器用さが、いかにも哲学者という感じで良い。「ブラック・スワン」ではやり玉に挙げられている中の一人なのだが。ポパーと大喧嘩したこともあるらしいしな。


データで斬る世界不況

データで斬る世界不況


データ・グラフが多用されているのでとても分かりやすい。今後の景気判断についてどういうデータに着目すべきかの指針になるだろう。


100年に1度のチャンスを掴め! (PHPビジネス新書)

100年に1度のチャンスを掴め! (PHPビジネス新書)

相変わらずの円安+インフレ予測→なので株を買えと言う論で頼もしい限りだ。まあ、必然的にそうならざるを得ないだろうと私も思う。それが緩やかにくるのか、急激にくるのかは置いといて。


レポート・小論文の書き方 (日経文庫)

レポート・小論文の書き方 (日経文庫)

一応、大学院で修士論文は書いたのだが、時間のない中やっつけで書いたのでどうもいまいち質の高いものにならなかった。最初のテーマ選びからちゃんとやらないと、外に出せるようなものはできないなあ、と感じた。