瀬島龍三/星新一
- 作者: 保阪正康
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1991/02/01
- メディア: 文庫
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- 作者: 最相葉月
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/03
- メディア: 単行本
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大学の頃は、むしろ筒井康隆の方が好きだった。
しかし、私にとって星新一と言うのは特別な作家である。と言うのは、以前触れたことがあるが大学の時に小説現代で毎月行われていたショート・ショートコンテストに入選したことがあり、その時の編者が星新一だったのである。(年一回ペースの時代ではないので、大分ハードルは下がっていたと思う)
ショートショートの広場(星新一(編集)/ショートショート)
http://s03.2log.net/home/mri/archives/book12.html
MRIが講談社から原稿料をもらった件。
http://s03.2log.net/home/mri/archives/blog196.html
イメージ的には、星新一の作品は上品すぎて後に残らないというか、一気にワクワクと読み進めるというよりは折に触れて少しずつ読むもの、と言う感じがあった。
「ショートショートの広場」の編者コメントに「ショートショートは軽薄なものと見られ、とかく軽視されがちであるが・・・・」と言うようなコメントを書かれていた記憶がある。若干含みを持った書き方が上品な作風と合わず、少し首をかしげた記憶があったが、この本を読んで、星新一氏の鬱屈が分かるような気がした。
大会社の御曹司として生まれながら父の後を引き継げず、ショートショートの第一人者として有名にはなるものの文学者としては評価されず・・・・。作品の表には出していないが、色々と思うところがあったのだろうか。才能も財産も全てある人生だったのに、それを生かし切れなかったというのは、凡人には計り知れない悩みがあったに違いない。
テーマとしては、人類滅亡とか過激なテーマも扱っているのに、えぐみを感じさせず、どこか品がある。藤子F氏の短編と似たような感じで、人類や社会全体を突き放して俯瞰しているような感じだろうか?
私個人としては、星新一氏は私の冴えない大学生生活に一度だけでも稲妻のようなきらめきを与えてくれた恩人であるし(いや、向こうとしては単に選者の仕事を果たしていただけだし、私は一回入選しただけで常連のように何度も掲載されている人たちとはレベルの差が明らかにあったが)、自分の書いたものが活字になって誰かに読まれる興奮が、このブログを書き続けるモチベーションになっている気がする。
晩年はショートショートコンテストの選考がメインの仕事になっていたらしい。今にして思えば、プロ作家に目を通してもらって批評までつけてもらえるなんて、もったいないことだという気がしてならない。
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ところで、小説現代に載ったのは大学時代の私にとって最も嬉しいことであると同時に、最も不快な思い出ともつながっている。
以前、こんなエントリを書いた。
真珠色の就活時代
http://soc.2log.net/monasouken/archives/blog78.html
面接そのものもどうも気に入らなかった。「大学でやったことはなにか」「それを通じてなにを得たのか」とか聞かれたが
「そもそも人間何かをやるとき『何を得るか』なんて考えるものか。面白そうだから以外の理由がどこにある」と叫びたいと言う気持ちでいっぱいだった。
就職活動の面接(というか、電話でリクルーターがあれこれ根掘り葉掘り聞いてきてたのだが)のときに、大学の時に達成したことの一つとしてショートショートが掲載されたことを喋ったのだが、「それを通じて得たものって何かな」といわれて正直戸惑ったことがある。
「そんなこと、いちいち考えて書いてるわけないだろう・・・・?功利主義のかたまりか」と思ったのだが、その人には通じそうもなかった。その人にとっては、就職活動とは「面接官がスムーズに理解できるような志望動機・学生像をイメージさせて上に売り込む活動」だったに相違ない。「大学生活でなしとげたこと」もその設問の一つに過ぎなかったのだろう。
サラリーマン生活が長くなった今ではそのリクルーター氏の立場も分かるし、学生時代の自分がナイーブ過ぎたとも思っている。リクルーターとの電話で、企業人としては特にプラスとならないような成功体験の話をした私が間違いだったのだろう。
ただ、ほかに色々なリクルーターと会ったが、他の人は多少の雑談は出来る雰囲気があったし、そこまでサラリーマンの鋳型にはめ込まれたような人はその人だけだった。ちゃんと話せばまた違う面もあったのかも知れないが・・・・
数年前、そのリクルーター氏が所属している会社は不良債権問題とか色々あってゴタゴタのうちに合併することになった。
私は人間が出来ていないので、少し「ざまあ見ろ」と思ったことは正直否定できない。(日本の大手金融機関のほとんどが合併や資本提携を経験してるし、他人事じゃないんですけどね)