KJ-monasouken’s diary

昔「モナー総研」と言うスレ紹介ブログやってた人のブログ。いまはTwitterの活動がメイン。

総員玉砕せよ!

総員玉砕せよ! (講談社文庫)

総員玉砕せよ! (講談社文庫)

水木しげる伝・戦中編の内容とかなり被ります。一応フィクションなので、微妙に話の流れが違ったりもしますし、戦争に対する怒りと言うのがより強く現れていたりもするのですが。
特攻・玉砕を語るとき、いわゆるカルト宗教の殉死者のように誰もが何の疑問も持たずに死んでいったようなイメージを持たれがちなのですが、実際の戦争経験者である水木しげる氏の作品を読んで見ると必ずしもそうでもないように見えます。
決して、国のやることに何の疑問も持たなかったわけではなく、それでもいやおうなく理不尽な死を迎えざるを得ない状況下で、「国のため」「家族のため」と無理やりにでも理由付けをしないとやりきれなかったと言うのが実態に近いのでは、と想像されます(作中ではそこまで描かれてないですけど)。この作品では、前半では「英霊」と言うイメージから程遠い、あくまで普通の日本兵の姿が描かれているので、後半の理不尽な死がより一層残酷なものに感じられます。

60年ほど前、こういう形で理不尽な死を迎えた人々のことを忘れてはならないと思うわけですが、この作品から読み取れる通り、誰かしらの犠牲を強いることを強要したり、それを政治的に利用する「空気」と言うのが実は最も恐ろしい、のかも知れません。大分薄くなったとは言え、そういう空気は全くなくなったわけではないように思えますし。